2020年10月12日

脳・心臓疾患の労災認定(過労死認定基準)とは?

「脳・心臓疾患」とは、脳内出血などの脳血管疾患と、心筋梗塞などによる心疾患を総称する労災認定基準上の概念です。

一般に「過労死」と呼ばれている類型の疾病もこれらの疾患による死亡を指します。

これら「脳・心臓疾患」を労災認定する上での基本的な考え方等を示したものとして、「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について(平成13年12月12日基発第1063号令和2年8月21日改正)」があります。

そこでこの内容を見ていきたいと思います。
@対象疾病とは?
A認定要件は?
B長期間の加重業務とは?
C具体的な労働時間数とは?

@対象疾病とは?
脳・心臓疾患の対象疾病については、下記の疾病が定められています。
<脳血管疾患>
(1)脳内出血(脳出血)
(2)くも膜下出血
(3)脳梗塞
(4)高血圧性脳症
<虚血性心疾患等>
(1)心筋梗塞
(2)狭心症
(3)心停止(心臓性突然死を含む)
(4)解離性大動脈瘤
なお、「脳卒中」や「急性心不全」等の場合も、その原因となった病気が対象疾病以外のものであると確認されない限り、対象疾病と同じ扱いにするものとされています。
また、「不整脈による突然死等」についても、「心停止(心臓性突然死を含む)」に含めて取り扱うこととされています。

A認定要件は?
認定要件は、下記の(1)、(2)又は(3)の業務による明らかな過重負荷を受けたことにより発症した脳・心臓疾患は、業務上の疾病として取り扱われます(労災認定されます)。
(1)発症直前から前日までの間において、発生状態を時間的及び場所的に明確にし得る異常な出来事(以下「異常な出来事」という)に遭遇したこと
(2)発症に近接した時期において、特に過重な業務(以下「短期間の加重業務」という)に就労したこと
(3)発症前の長期間にわたって、著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務(以下「長期間の加重業務」という)に就労したこと
実務的に多いのは上記(3)ですが、(1)(2)の要件もありますので、ご注意ください。

B長期間の加重業務とは?
A認定要件を具体的に確認していきたいと思います。
実務的に多いのはA(3)ですので、こちらの詳細を確認します。

認定基準によると、恒常的な長時間労働等の負荷が長期間にわたって作用した場合には、「疲労の蓄積」が生じ、これが血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させ、その結果、脳・心臓疾患を発症させることがあるとしています。

このことから、発症との関連性において、業務の加重性を評価するに当たっては、発症前の一定期間の就労実態等を考察し、発症時における疲労の蓄積がどの程度であったかという観点から評価するとしています。

具体的な業務の加重性の評価に当たっては、疲労の蓄積の観点から、労働時間のほか下記に示した負荷要因について十分検討することとしています。
(1)不規則な勤務
(2)拘束時間の長い勤務
(3)出張の多い勤務
(4)交代制勤務・深夜勤務
(5)作業環境
(6)精神的緊張を伴う業務

C具体的な労働時間数とは?
その際、疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられる労働時間に着目すると、その時間が長いほど、業務の加重性が増すところであり、具体的には、発症日を起点とした1ヵ月単位の連続した期間をみて、
(1)発症前1ヵ月ないし6ヵ月間にわたって、1ヵ月当たりおおむね45時間を超える時間外労働(1週当たり40時間を超えて労働した時間数)が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いが、おおむね45時間を超えて時間外労働が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できること
(2)発症前1ヵ月間におおむね100時間又は発症前2ヵ月ないし6ヵ月間にわたって、1ヵ月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できること
とされています。

このため、脳・心臓疾患を発症した(過労死を含む)従業員等が、業務災害を主張してきた場合には、まずは上記基準に基づき労働時間数の確認を行うことが重要です。

なお、注意が必要なのは、(2)の「ないし」は、発症前2ヵ月間、発症前3ヵ月間、発症前4ヵ月間、発症前5ヵ月間、発症前6ヵ月間のいずれかの期間において、1ヵ月あたりおおむね80時間を超える労災認定上の時間外労働が認められるかを意味します。

つまり、
発症前2ヵ月間の時間外労働時間数÷2>おおむね80時間
発症前3ヵ月間の時間外労働時間数÷3>おおむね80時間
発症前4ヵ月間の時間外労働時間数÷4>おおむね80時間
発症前5ヵ月間の時間外労働時間数÷5>おおむね80時間
発症前6ヵ月間の時間外労働時間数÷6>おおむね80時間
のうち、いずれかの式を満たせば業務と発症の関連性が強いと評価されることになりますので、正確な理解が必要です。

posted by ユナイテッド・パートナーズ社労士事務所 at 11:39| 労務相談Q&A