2020年03月17日

新型コロナウィルスによる休業に休業手当は必要?

新型コロナウィルスの影響で休業を余儀なくされている会社が多いと思います。

このため、新型コロナウィルス関連で休業した場合に、「休業手当」の支払いが必要かどうかについて検証していきたいと思います。

本題に入る前にまず、そもそも「休業手当」とは何かについて整理したいと思います。

「休業手当」とは、労働基準法第26条で以下のように定められています。

「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。」

つまり、「休業手当」の発生要件は以下のとおりです。
@「使用者の責に帰すべき事由により」
A「休業したこと」

@の要件については、厚生労働省は、「使用者の責に帰すべき事由」について、「第一に使用者の故意、過失又は信義則上これと同視すべきものよりも広く、第二に不可抗力によるものは含まれない」と解しています。

そして、「不可抗力」については、「第一に、その原因が事業の外部より発生した事故であること、第二に、事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできなかった事故であることの2要件を備えたものでなければならない」と解しています。

Aの要件については、「休業」とは、社員が労働契約に従って労働の用意をなし、労働の意思および能力を有するにもかかわらず、その労務提供の実現が拒否され、または不能になった場合と解されています。

この@Aの要件を基に今回の新型コロナウィルスの影響により休業した場合に「休業手当」の支払いが必要かどうか見ていきたいと思います。

<1.社員が新型コロナウィルスに罹患し、休んだ場合>
社員が新型コロナウィルスに罹患し、休んだ場合は、@「使用者の責に帰すべき事由」の要件も、A「休業したこと(そもそも就業できないため、労働の能力がない)」の要件も満たさないため、休業手当の支払いは必要ないと思われます。

<2.新型コロナウィルスに罹患した疑いのある社員(濃厚接触者等)を休ませる場合>
社員が新型コロナウィルスに罹患したかどうか分からない状況で休ませる場合は、例えば、会社の予防的措置で休業を命じた(会社の自主的な判断)場合は、原則として@「使用者の責に帰すべき事由」の要件も、A「休業したこと」の要件も満たしているため、休業手当の支払いが必要だと思われます。

実務的には、在宅勤務が可能な業務に従事している社員の場合は、在宅勤務に切り替え、通常の賃金を支払うという対応も可能です。

もっとも、保健所などからの指示で隔離され、就業できない場合は、@「使用者の責に帰すべき事由」の要件も、A「休業したこと」の要件も満たしていないため、休業手当は必要ないと思われます。

<3.新型コロナウィルスに罹患した疑いのある社員が自主的に休む場合>
新型コロナウィルスに罹患した疑い(発熱などの症状)のある社員が自主的に休む場合は、通常の欠勤と同じであるため、@「使用者の責に帰すべき事由」の要件も、A「休業したこと」の要件も満たしていないため、休業手当の支払いは必要ないと思われます。

<4.小学校等の臨時休校により社員が休む場合>
新型コロナウィルスの影響により、小学校等の臨時休校により社員が休む場合は、@「使用者の責に帰すべき事由」の要件も、A「休業したこと(労働の意思がないため)」の要件も満たしていないため、休業手当の支払いは必要ないと思われます。

このため、休業手当の支払いは必要ないと思われますが、政府による「小学校休業等対応助成金」による賃金補助があるため、これを活用することもできます。

これは、小学校等の臨時休校により保護者が休業した場合等に、労働基準法で定める年次有給休暇とは別に有給休暇(賃金全額支給)を取得させた会社に対する助成制度です。

<5.新型コロナウィルス感染症の影響により事業を休止し、社員を休業させる場合>
新型コロナウィルス感染症の影響により、事業の休止などを余儀なくされ、やむを得ず休業とする場合、事案にもよりますが、原則として@「使用者の責に帰すべき事由」の要件も、A「休業したこと」の要件も満たしていると思われるため、休業手当の支払いが必要と考えます。

ただし、休業の原因が「不可抗力」に該当する場合は、@「使用者の責に帰すべき事由」の要件を満たさなくなるため、休業手当の支払いは必要ないと考えます。

なお、厚生労働省のQ&Aによると、不可抗力に該当するかどうかの判断については、以下のように述べています。

具体的には、例えば、海外の取引先が新型コロナウイルス感染症を受け事業を休止したことに伴う事業の休止である場合には、当該取引先への依存の程度、他の代替手段の可能性、事業休止からの期間、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、判断する必要があると考えられます。

また、社員に休業手当を支払う場合、政府の「雇用調整助成金」による資金の補助があるため、要件を満たせば、これを活用することができます。

「雇用調整助成金」とは、景気の後退等、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされ、雇用調整を行わざるを得ない事業主が、労働者に対して一時的に休業、教育訓練又は出向を行い、労働者の雇用を維持した場合に、休業手当、賃金等の一部を助成するものです。

posted by ユナイテッド・パートナーズ社労士事務所 at 11:02| 労務相談Q&A